直線(的)の構成 – 竹

  • 直線(的)の構成 – 竹 | Wataru Imamura
  • 直線(的)の構成 – 竹 | Wataru Imamura

理由はさておき、直線、あるいは直線的なものが好きだ。毎日スタディと称して直線のドローイングを続け、ときに直線にフォーカスした作品をつくってきた。当たり前のことかもしれないが、その過程で、同じものでも見る角度や位置が変わるだけで、まったく違う姿に見えるということに気がついた。あるときは垂直に、あるときは平行に、またあるときは斜めに。直線はまるで自立した意志をもっているかのように、流動的だった。そうして意味を持たない抽象的な存在としての直線と向き合い続けるうち、次第にこう考えるようになった。——物事から意味を取り外すことで、かえって形そのものがより具体的に立ち上がってくるのではないか、と。

そんな思いを抱えながら、自宅に「材」を並べ、日々眺めていた。伐採されたままの材だったが、その形はしなやかで美しかった。瑞々しさこそ失われていたが、直線的な姿に力強さに生命力を感じた。そこで、材のフォルムに従って、直線的な構成を施すことにした。本作における黒い構成は、意味の排除であり、視点の誘導でもある。形そのものが持つ美しさや力強さを見つめ直すための、私的な観察によるささやかな操作である。

今回扱った竹は防虫のため、大まかに火で炙られた状態で保管されていた。表面に油分による汚れが多く、そのままでは着彩が難しく処理が必要だった。油分の処理には「湿式法」と「乾式法」があると教わった。前者は加熱したアルカリ水溶液で煮て浮き出た油分を拭き取る方法、後者は竹を火で炙り、浮き出た油分を拭き取る方法である。本作では自宅にて、半ば強引に、ガスバーナーでの「乾式法」で表面を処理した。熱した油分は短時間で再び固まってしまうため、少し炙っては拭くという作業を繰り返した。手間と体力を要するこの方法を選んだのは、たとえ技術的に未熟であっても、多くのことがインスタントに手に入る時代において、自らの手と体を使った労働が、「竹」に対する敬意を表す、最も率直な方法だと思えたからだ。(W.I.)

制作
Wataru Imamura
制作年
2025