直線(的)の構成 – 楮

  • 直線(的)の構成 – 楮 | Wataru Imamura

理由はさておき、直線、あるいは直線的なものが好きだ。毎日スタディと称して直線のドローイングを続け、ときに直線にフォーカスした作品をつくってきた。当たり前のことかもしれないが、その過程で、同じものでも見る角度や位置が変わるだけで、まったく違う姿に見えるということに気がついた。あるときは垂直に、あるときは平行に、またあるときは斜めに。直線はまるで自立した意志をもっているかのように、流動的だった。そうして意味を持たない抽象的な存在としての直線と向き合い続けるうち、次第にこう考えるようになった。——物事から意味を取り外すことで、かえって形そのものがより具体的に立ち上がってくるのではないか、と。

そんな思いを抱えながら、自宅に「材」を並べ、日々眺めていた。伐採されたままの材だったが、その形はしなやかで美しかった。瑞々しさこそ失われていたが、直線的な姿に力強さに生命力を感じた。そこで、材のフォルムに従って、直線的な構成を施すことにした。本作における黒い構成は、意味の排除であり、視点の誘導でもある。形そのものが持つ美しさや力強さを見つめ直すための、私的な観察によるささやかな操作である。

楮は、主に和紙の原料として使われる。和紙に用いるのは表皮部分のため、芯は多くの場合、薪として処理されるのだという。焚き付け材としても優秀らしく、そういった用途で市販されているものも見つけた。楮の芯は、細い白木と枝のあいだのようで、とても美しい。何より、思わず手に取って振り回したくなる、素朴で、心地よい歪さがある。当初はその存在感を、どうにか紙の上に定着させたいと思った。ちょうど、手漉き和紙と集落で焼かれた炭の顔料をいただいていたこともあり、いくつかスケッチを試みたが、結局は触れずにはいられなかった。本作では、楮そのものを紙のような基底材と見立て、その表面を焼くことでドローイングを行っている。紙の原料となる表皮を失い、多くは薪として燃やされていく楮にとって、それが自然な表現方法のように思えた。(W.I.)

制作
Wataru Imamura
制作年
2025