絵の具を載せる紙、印刷するための紙、切って形作られるための紙……。紙は表現の支持体になったり、表現の一部になることはあっても、紙自体が表現になることは稀である。裏山から採取した楮の皮を剥ぎ取り、紙を漉く直前の状態まで処理した後、着色し、質量を保った状態で形作って乾燥させた。果たしてこれを紙と呼べるのかは分からないが、JIS規格による紙の定義「植物その他の繊維を膠着（こうちゃく）させて製造したもの」には当てはまっているように思われる。