momü object

和紙問屋オオウエが立ち上げたYŌRAIとのコラボレーションとして、楮の揉み紙を使用したオブジェを制作した。揉み紙はいわゆる加工紙に分類されるが、こと和紙の加工紙となると原料の種類や配分、水の状態や漉き方、揉み、表面加工に用いるこんにゃく等の具合、染色の材や手法など、手作業を含む様々な要素が存在し、それぞれの関係性によって最終的な紙の仕上がりが変化することからコントロールが極めて難しい。彼らは納得のいく結果になるまで職人と試行錯誤を繰り返してできあがった紙をmomüとして発表したが、そこに至るまでには多くの試験材やいわゆる“没”とされる紙が生じた。それらを提供してもらい、オブジェとして再生産したのが本作である。

発端はmomüの見本帳を作れないかという問いであった。momüは一定の質を担保しつつも、揉みの表情差や風合いの個体差など、ある程度の揺らぎを許容することで和紙としての価値を見出している。そこで均質な見本帳として固定してしまわず、それぞれの個体差を活かすことで“見本帳”としてのオブジェを作ることにした。

このシリーズはおおよそA4に切り取った紙を分解し、立体として空間に起こしたものである。洋紙に比べて小さな単位で生産される和紙はロットによる差異が大きく、原料の変更、製法の改善、銘柄の廃盤などが頻繁に起こるため、決まった見本帳を長く提供することが難しい。そのため問屋としての彼らは紙に関する相談があると、コンシェルジュさながら今入手可能な紙をA4サイズの見本として試供することで顧客の要望に応えてきた。このシリーズでは「見本帳としてのA4」をひとつの制約とし、揉み紙ならではの三次元性を探求している。

オブジェの構成要素として、momüとともに作者が自ら裏山で収穫した楮を組み合わせて使用している。momüは楮からできている。オブジェに組み合わせているのは、木部や皮、紙になる前の繊維など、見た目は違えど植物としては同じ楮である。同じでもあり異なりもする楮を並置することで、目の前にあるモノはあくまで一時的な状態であるのではないかという感覚を得た。それは材でもありそれ自体が言葉を発する表現でもある。モノにはそこにいたるまでの過程や背景があり、さらにそこから別のモノに発展する可能性も秘めている。


楮紙(YŌRAI) / 楮(材林)/ 柿渋染め楮紙(作者抄紙)

制作
Isamu Hazama
制作年
2026