原寸材
今の場所に住み始めた頃は身の回りのすべてのものが珍しくて、目に入るモノの色や形を興味深く観察していた。そのモノの名前がわかると材として認識し、背景を調べたり地元の人に話を聞いたりして、少しずつ身の回りのものについて詳しくなってきた気がしてきていた。一方で、少し知識がついてくると無意識のうちに名前を言い当てたり分類したりすることが先立って、そのモノをかえってよく見れていない自分に気がついた。立体物を陰影が写らないように平面として写真にうつすことで、新しい目で純粋に色や形を観察できるのではという思いから作りはじめたシリーズ。それらの写真をほぼ原寸大で複製したこれらのプリントを「原寸材」と呼んでいる。この作品はときには自分が住む場所で目にしたモノにまつわる背景、歴史などを伝える装置でもあり、属性を排除してただ鑑賞するためのツールでもあるという、矛盾をはらんだ作品になった。紙は同じ里山から採集した楮から自ら漉き、あくまで目の前にあるものを活用するという態度をとっている。(I.H.)
- 制作
- Isamu Hazama
- 制作年
- 2021 –
- 材
- 楮